ゴールデンスランバー の書評・感想

おまえ、雅春のことをどれだけ知っているんだ?
言えよ。どれだけ詳しいんだよ

ゴールデンスランバー

仙台で金田首相の凱旋パレードが行われている、ちょうどその時、青柳雅春は、旧友の森田森吾に、何年かぶりで呼び出されていた。
昔話をしたいわけでもないようで、森田の様子はどこかおかしい。
訝る青柳に、森田は「おまえは、陥れられている。今も、その最中だ」
「金田はパレード中に暗殺される」
「逃げろ!オズワルドにされるぞ」と、鬼気迫る調子で訴えた。
と、遠くで爆音がし、折しも現れた警官は、青柳に向かって拳銃を構えた―。


好き嫌いハッキリ別れる小説だなぁと思いました。


悪者をやっつけて「完。」


みたいなスッキリした小説が好きな白黒ハッキリさせたい人は消化不良を起すかもしれません。


「逃げろ!オズワルドにされるぞ」


この旧友森田の言葉通り、パレードの最中に起こった首相暗殺事件の濡れ衣を着せられた主人公青柳、 逃げる。逃げる。とにかく逃げる。


ただひたすらに逃げます。


追い詰めてくる得体の知れない巨大な陰謀が何なのか
ベールに包まれていてまったく分かりません。


ケネディ大統領暗殺事件をモチーフに作られているようで、大まかなあらすじほとんど同じです。


主人公は大統領暗殺容疑者のオズワルドに仕立て上げられ そのオズワルドをジャック・ルビーが殺害し、事件の真相が歴史の闇に葬り去られたように、 主人公を容疑者として逮捕するというよりも命を狙うべく追われます。


この訳も分からずに周到に仕組まれた罠にはめられ、濡れ衣を着せられ
何もしていないのに逃げ続けなければならない主人公がとても不憫です。


あまりに報われないという感想が大きいです。


この粗筋にポイントを置くと、あまり面白くはないのかもしれません。


でも僕が一番好きなシーンは容疑者として追われる主人公青柳の父親がインタビューでリポーターに


「息子さんがやったことに、なにか謝罪の言葉はないんですか」と囲まれるシーンです。


TVなどでリポーターに取り囲まれ矢継ぎ早に詰問される
辛辣な状況の中で謝罪する家族の映像などを目にした事があるんですが


この、主人公の父親は違います。


「おまえ、雅春のことをどれだけ知っているんだ?
言えよ。どれだけ詳しいんだよ」

~略~

「昨日今日、雅春のことを調べたようなお前に、何が言い切れる!」


とやり返します。


この、電車で痴漢を見つけたら 引きずり降ろしてマウントポジションでパウンドをするような
豪快な親父がとても痛快です。


親が子を信じるその信頼関係の深さはとても胸を打ちます。


最終的にカメラに向かって


「まぁ、雅春。 ちゃちゃっと逃げろ。」


と言い放つ始末。


滅茶苦茶カッコイイ。


そんなわけで、この本の中で描かれている信頼関係がとてもいいなぁと思いました。


むしろ首相暗殺はどうだって良かった。


この信頼関係こそがこの物語のポイントだと僕は思うんです。


父親であったり、職場の仲間であったり、大学時代の友人であったり、元カノであったり。


そう言った身近な、実際に時間を共有した人達が
警察や、マスコミがどれだけ青柳を犯人に仕立てあげても


「自分達の方がアイツの事をよく知っているんだ。お前らなんて何も知らないくせに」


と言わんばかりに青柳の言葉を信じ、助けようとする所は あまり考える事のない人を信頼する事の意味を考えさせられました。


ただ、それでいて元カノと再びごにょごにょなんて書き方をしない所が
井坂さんのとても好きなところです。


今は結婚して、子供がいる元カノがとても深く物語に関わってきて主人公をサポートします。


別れたけれど、一度付き合った二人はとても深い信頼関係があって、


それなのにこの二人が交錯しない という部分がとても深い。


現実にありがちな


「今でもお前のことが忘れられないよ、寂しいよ・・」


とか


「なんか~元カレと久しぶりに会って~雰囲気でそのままヤッちゃって~」


みたいな グダグダ感がまったくない。


終わった事に対してしっかりと線引きが出来ていて、ブレる事のないそのスタンスはとても清清しい。


スガ シカオ。


ミステリーとしての書き方や、構成ではなく、
そーゆー信頼関係に注目して読むとすっごい面白いと思うよ


そんな訳で、諦めずにひたすら逃げ続ける主人公・青柳を応援してみてはいかがでしょうか。


「皆さん、ご一緒に。」


「行け!青柳屋!」


500ページに渡る長編ですが、それがメインとなる時間軸では事件発生から2~3日しか経っていないのは 不思議な感覚でした。


現在、宅配ドライバー時代、大学時代と時間軸を転々と移動しながら、
点を打つように進んでいき、最後にそれを線で繋げるような


そんな書き方をされていて、そういった書き方はとても面白いし、頭がいいなぁと思います。


photo
ゴールデンスランバー
新潮社 2007-11-29
売り上げランキング : 106
評価

フィッシュストーリー モダンタイムス (Morning NOVELS) 終末のフール 砂漠 (Jノベル・コレクション) あるキング

by G-Tools , 2010/02/03



PAGE TOP
Profile
name:Jose
sex:male
age:31
本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
information
このサイトは管理人がネット巡回中に見かけたおしゃれな雑貨、ショップのキャンペーン情報、読んだ本の感想の紹介をしているサイトです。
主に楽天市場内のショップ、amazon、Moma、AllAboutさん等のおしゃれな雑貨をまとめて紹介しています。

アフィリエイトプログラムを利用しており、実際の購入手続きに関してはリンク先のショップでお手続きして頂くようになりますので ご購入の際はリンク先で商品情報をご確認下さい。
Contact RSS