正しさと間違いは、シーソーの両端にあるわけじゃない。
当たり前のことだけど、正しさは間違いを内包していたり、間違いの前提として正しさがあったりする。
僕の好きな人が、よく眠れますように
「好きになることとは、こんなにも巨大なことだったのか」
北海道から僕の通う大学院にやってきた、魅力的なゲスト研究員。
だが、彼女はすでに既婚者だった...。
やがてどうしようもなく抑えられない二人の恋の行方は―
純愛系とかラブストーリーの小説をほとんど読まないんですが、これは良いよ。
恋をして苦しくてご飯が食べられなくなる女の子とは反対に、フツーにカレーとか食ってしまうデリカシーのなさとか「男」と「男子」の中間くらいのバカかっこ良さが際立っていてとても好感が持てた。
わりと中村 航さんの作品に共通しているような気がする「男子は女子を笑わせてなんぼだろ」的な主張がすごく好きです。
底なしのくだらなさとか何かしら熱い想いとか押さえきれない恋とか、これは男目線でかなり共感出来るんじゃないか思う。
大学院に通う主人公が指導的な立場を勤める物流倉庫のアルバイトに入ってきて
なぜか「坂本」という偽名を使い、変な挨拶をする木戸さんという男がでたらめにかっこいい。
人付き合いが苦手なのかとてもたどたどしい敬語で目を泳がせながら、けれど「頑張ります。」という言葉だけははっきりと言うシーン
その刹那、男と僕の視線は石火のように交わったんだと思う。
あなどんなよ、という言葉が、瞬刻、脳裏に張りついた気がする。
とか本当にちょっとしたところでの男らしさがすごくかっこよくてリアルなんです。
主人公の大学院に北海道から1年だけゲスト研究員としてやってきた斎藤 恵という女の子に主人公は恋をする。
けれどその女の子は学生結婚をしていて北海道に旦那さんがいてそれが許されぬ恋だと知る。
許されぬ恋と知りながらも押さえきれない感情に二人の距離はしだいに近付き、近付きすぎて逆に動けなくなり...
お互いが相手を好きだと分かった事で逆にそれ以上近付けなくなり
それでも毎日、本心を隠し変わらずに会話を交わすシーン
僕らは毎日、冗談を言ったり、言われたり、笑ったり、笑わせたりする。
ただ、今までよりうまく笑えなくなってしまうときがあって、
そのことをすごく相手に悪いと思っていた。
という心境とかとても切なかった。
そんな微妙な雰囲気はわりと誰でも経験あるんじゃないだろか。
基本的に許されぬ恋だから人によって受け止め方は違うだろうけど
ずっと動けずにいた二人が突き抜ける心境の変化がとても良かった。
個人的に不倫のドロドロした部分や、後ろめたさとか、何かを諦めるシーンなんかは見たくない。
どんなに抑えても押さえきれず溢れ出すほどの超絶な恋をしてしまったのなら常識とか理屈とかもうそんなものはぶっ壊してしまえばいいじゃないか。
いいのかどうか分からんけど、大人になるごとにあれやこれや理由をつけて色んなことを諦めてしまうようになって、それが正しいことだとか大人ぶってる冷めてのびきったカップラーメンみたいな人生よりも熱くて煮えたぎってあらゆるものを破壊してそこに道を作り出すような、そーゆーものが見たいじゃないか。
もちろん必ず直面する問題は沢山あるだろうけど、それを踏まえた上での恋ならばもぅ仕方がないし避けられない問題を前にして理由をつけて逃げ出したり諦めたりするような男は結局のところ情けないと思う。
正しさと間違いは、シーソーの両端にあるわけじゃない。
当たり前のことだけど、正しさは間違いを内包していたり、
間違いの前提として正しさがあったりする。
ホントにそうだと思った。
物語は二人が許されないと知りながら超絶な恋に落ちる部分が中心になり、
ネガティブな部分はほとんど描かれていないので勇気や元気が欲しい時にうってつけだと思います。
きっと恋がしたくなると思うよ。
僕の大切な妹は、東京タワーを背にくるくると回る。
妹よ、と僕は思う。
お前は兄さんや木戸さんなんかとは違う。
お前はこんな素敵に回ることができる。
お前はどうせロクでもない男と、しょうもない恋をして、くだらないことで泣いたり笑ったりするのだろう。
だけど妹よ、お前の強さや優しさだけが、今、このリアルな世界を回しているんだぜ。