図書館の神様 の書評・感想

きっぱりさっぱりするのは楽じゃん。
そうしてれば正しいって思えるし、実際間違いを起こさない。
だけどさ、正しいことが全てじゃないし、姉ちゃんが正しいって思うことが
いつも世の中の正しさと一致するわけでもないからね。

図書館の神様

アクシデントで夢をあきらめ、
傷ついた心を抱え、国語教師としてある高校に赴任したヒロイン清(きよ)。
彼女が学校の図書館で出会ったひとりの男の子、垣内君。
どこからでも海の見える明るい高校で、瑞々しい物語が始まる...。

とても優しい気持ちになれた本でした。


良いよコレは。


読んでいて心を激しく揺さぶられたりする事はなかったけれど、
何かにそっと包み込まれるようなそんな優しい気持ちにしてくれました。


-同じバレー部の同級生が自殺したのは自分のせいかもしれない -


そんな冒頭の展開から、ちょっとヘビーな話なのかなと敬遠していたけれど、そういった自責の念に駆られるシーンや人間の業の深さに思いを巡らせるシーンはほとんどありません。


個人的にそういった罪と罰的な部分を突き詰めていきたくて手に取った本ではないので、
ないならないでそれはそれで良かった。


清く正しく曲がった事やいい加減な事が大嫌いで仲間にもきつく当たる事の多かった主人公、清。


この女の子が冒頭でもしかしたら自分に責任があるのかもしれない同級生の自殺をきっかけにそれまで必死に打ち込んできたバレーを辞めてしまい、 目指していた体育大学にも行かず地元から離れるように地方の私立大学に進学し、 学校の講師になるけどそれまでの完璧主義はすっかりなくなり色んな事に投げやりになっていく。


付き合っている人とは不倫の関係だし、再びバレーに携わりたいだけでなった学校の講師の授業も苦痛でしかなく職員会議も眠気との戦いでしかない。


結局バレー部の顧問にもなれず文芸部の顧問にされてしまい、けれどそこで垣内君というたった1人の部員と出会いまったく興味もなく嫌々やっていた文学に少しずつ興味を持ち始める...


だいたいそんな感じのストーリーなんだけど、主人公の文芸部に対する偏見や価値観が変わっていく過程がとても気持ち良かったです。


この価値観の変化を認められるって事はとても素敵な事だと思う。


自分の価値観を絶対に曲げない人を見ていると、どうしてこの人はやった事もないのに知りつくしたような顔でどっかで聞いた事のあるセリフをさも自分の言葉のように語るんだろう?


そう思いよくウンザリしてしまう。


最初主人公も「文芸部なんてさー」とバカにしているけれど、それが文学に触れていく中で文学に対する価値感が変わっていく過程は読んでいてとても気持ちが良かった。


中盤で他の教員の文芸部なんてドロップアウトするヤツのためだとか、間に合わせだとか暇つぶしだとか、そう言った発言に文学に目覚めた主人公がついにはキレるシーンや
「あいつらをぎゃふんと言わせましょう」という垣内君の主張大会のスピーチはかなりガッ!ときた。


文学サイコーです。


それでいて文学とは的な堅苦しい事は一切触れず、夏目漱石の「こころ」ってちょっとナマいよねとか、川端康成の「杼情歌」の鼻血ブーで爆笑したり 全体的な空気感が良い感じにユルいんです。


そうゆう底の浅さがとても心地良かった。


1番良いなって思ったのは、冒頭の友人の死という部分を軽視していないんだと言うようなラストシーンが僕は好きでした。


この物語の死を取り入れながらそこに重点を置かず、それでいて最後にさりげなく回収する嫌味のない所が僕は好きでした。



「この作文用紙には、川端康成と山本周五郎について書いてあるんだけど、
そんなこと聞きたくないだろう?」

垣内君のいつもと違う口調にみんながざわついた。

みんな彼は当然、理路整然と小難しい文学を語るのだと思っていた。

「僕は学者じゃないし、文学者や小説について見解を述べたりしたくない。
みんなにとってそんなことどうでもいいんだから。
本気で川端康成について知りたい人は、図書室へ来て下さい。たくさん本はあります。
文学なんてみんなが好き勝手にやればいい。
だけど、すごい面白いんだ。それは言っておきたい。
だから、僕は一年間、ずっと夢中だった。
毎日、図書室で僕はずっとどきどきしてた。
ページを開くたび、文学について言葉を生み出すたび、僕はいつも幸せだった。
冬にサイダーを飲んだり、夏に詩を書いたり。毎日、文学は僕の五感を刺激しまくった」

垣内君はみんなを見回しながら、堂々と語った。

「文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ。
見ず知らずの女の人に恋することだってできる。
自分の中のものを切り出してくることだってできる。
とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう。
のび太はタイムマシーンに乗って時代を越えて、どこでもドアで世界を回る。
マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。

僕は本を開いてそれをする」

垣内君はそう言うと、いつもの顔に戻って、照れくさそうに「以上です」と頭を下げた。


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図書館の神様
マガジンハウス 2003-12-18
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評価

見えない誰かと 戸村飯店青春100連発 強運の持ち主 温室デイズ ありがとう、さようなら (ダ・ヴィンチ ブックス)

by G-Tools , 2010/04/22



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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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