半島を出よ の書評・感想

半島を出よ

北朝鮮のコマンド9人が開幕戦の福岡ドームを武力占拠し、2時間後、複葉輸送機で484人の特殊部隊が来襲、市中心部を制圧した。
彼らは北朝鮮の「反乱軍」を名乗った。財政破綻し、国際的孤立を深める近未来の日本に起こった奇蹟。

圧倒的なスケールと圧倒的なリアリティと本当に危険な思想だなぁと思いました。


スケールとリアリティと危険な思想度において本当にずば抜けている。


特に武装した北朝鮮の兵士に占拠された試合中の福岡ドームで、警備員が拳銃を突きつけられるシーン


銃を突きつけられた警備員は照れたような薄笑いを浮かべていた。


という辺りの描写がとてもリアルだと思った。


危険という概念に対して真剣に受け止めようとしなかったり
緊張や恐怖から目をそむけるために笑ったり


もし、自分が拳銃を突きつけられても同じようなリアクションをとるんじゃないだろうか。


残酷な描写や日本政府、日本人に対する批判的な表現が多くて率直に「面白い!」とは言いにくいけれどこの世界観の完成度の高さとか読み応えっぷりとかにはどうしようもない依存性があると思う。


 だってこんな文章が書ける人って他にいないもん。

危険な思想だなんて思う小説家も他にいない。


「活字中毒」とか言うけれど、活字に常に接していないと気分が悪くなる人にとって普通の小説をたばこ1箱分とすると、この小説はセブンスターの1カートン分くらいに相当するんじゃなかろうか。


ページ数とか内容の濃さとか重さとか、活字を目で追うのが中毒的にやめられない読み手にとって最高の小説だと思う。


参考資料の数を見ただけでも村上 龍さんがこの本を書くのに費やしたエネルギーの凄まじさが分かる。


巻末の参考資料の数が異常すぎる。

これは渾身の力作なんじゃなかろうか。


本を読んでいて「渾身」なんて言葉が浮かぶのは村上 龍さんの小説くらいだ。


物語に主人公らしい主人公は存在せず、

・福岡市中心部を制圧した北朝鮮のコマンド(高麗遠征軍)
・制圧された福岡市の市長、県知事、職員、住民
・総理、政治家、内閣情報調査室、
防衛庁、警察やSAT
・殺人事件や傷害事件を起こし社会からはみ出した者達(
高麗遠征軍に攻撃を仕掛けるイシハラグループ)

それぞれの視点を通して物語は進んでいきます。


特に北朝鮮の兵士を「語り手」に加えている事に関してあとがきで


「そんなことは不可能だと思った。」と書かれています。


ソウルで十数人の脱北者に会い、インタビューをした後もずっと「そんなことができるわけがない」と思っていたそうです。


そんなことができるわけがないが書かないと始まらない、と思いながら書き始めたのだ。


不可能な事に対して行動しないとか、別のアプローチをするとかじゃなくて
不可能だと思う事に対して、真正面から、全身全霊で向かっていき、
ベストを尽くしているからこそ読んでいて「渾身」だと思えるんだろう。


その熱量とか、尋常じゃない真剣さに触れると今まで気にならなかった薄っぺらさに気付くようになってしまい同じような緻密さとか血沸き肉踊る文章を他の作家さんにも求めてしまい、
それが得られずにどうしても村上 龍作品ばかりを読んでしまいそうになる。


それが全てじゃないと分かってはいるけれど。


そんな感じがしました。


過激で残酷な描写が多いので良いとか悪いとか内容について明確な感想が言えないけれど、


【もし、本当に身の危険、危機に直面した時、どう対応するのか?】を真剣に考えるために読んで損はないと思います。



photo
半島を出よ (上)
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評価

半島を出よ (下) 半島を出よ〈下〉 (幻冬舎文庫) 昭和歌謡大全集 (幻冬舎文庫) 希望の国のエクソダス (文春文庫) 2days 4girls (集英社文庫)

by G-Tools , 2010/10/14



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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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