信玄の軍配者 の書評・感想

どんなに辛い人生であろうと、ただ生きているという、それだけでも十分に意味のあることです。

信玄の軍配者

日本最古の大学・足利学校で学問を修めた勘助は、その後、駿河国で囚われの身となったまま齢四十を超え、無為の時を過ごしていた。預かる軍配もなく、仕えるべき主君にも巡り合えず、焦燥だけがつのる日々...そんな折、武田信虎による実子・晴信(のちの信玄)暗殺計画に加担させられることになる。命を賭けた一世一代の大芝居、学友たちとの再会を経て、「あの男」がいよいよ歴史の表舞台へ―。

早雲の軍配者の続編です。


ついに出た。

待ってたよ。


前作では主人公・小太郎と今作の主人公・四郎左(山本勘助)、それにおそらく次作の主人公・曾我冬之助が足利学校で共に学びいつかかならず三人で、戦場でお互い命を懸けて戦おう。と別れ小太郎が軍配者としていよいよその才を発揮する所で終わってしまったので本当に待ち遠しかった。


だって皆すぐに活躍するって思うじゃんフツー。


前作は軍配者として活躍する前の下積みの話で、1冊をまるまる前フリに使ったと言っても言いんじゃなかろうか。


だた登場人物の性格や生い立ち、時代背景などは前作で長い時間を掛けて説明済みなのでその効果として今作では色んな事がすんなり受け入れられた。


小太郎の底抜けの優しさや素直さ、

差別され蔑まれ虐げられ続けた四郎左の苦労

冬之助、四郎左、小太郎、窮地に追い込まれたそれぞれが助け合う友情


前作を読んでいるとそういったシーンに思い当たる部分があり説得力があった。


もし前作での基盤固めがなかったら四郎左のセリフに重みがないし、小太郎の優しさを理解出来ないし、敵という立場ながら助け合う三人の行動が安っぽくなっていたと思う。


とりわけ武田 晴信(後の信玄)と出会い四郎左がついに召抱えられるシーンには本当に胸が熱くなった。


何年もの間、軍配者として召し抱えてくれる家がないものかと諸国を歩き回ったのです。
しかし、どこも相手にしてくれませんでした。
幼い頃に流行病に罹って死にかけたせいで、こんな顔になりました。
右目もほとんど見えません。
足利学校にいるとき毒草で皮膚が爛れた跡も醜く残っています。
足も悪いので人並みに走ることもできません。
かといって剣術も苦手ですから、戦場で敵と相見えれば、たちまち倒されてしまうでしょう。
どこの家でも、わたしの顔や体を見ると、犬でも追うように門前払いしました。
まともに話も聞いてもらえませんでした。
仇が待ち構えている駿河に敢えて戻ったのも他に見込みがなかったからで、好きこのんで戻ったのではありません。
それなのに御屋形さまは、こんなわたしを...しかも、さっき初めて会ったばかりで、お命まで狙っていたような男を高禄で召し抱えようというのですか?
何かひどい勘違いをなさっているのか、それとも、わたしをからかっておいでなのかと...



という四郎左に対し足利学校と建仁寺のふたつで熱心に修行した四郎左を
晴信は評価しこう言います。


勘助の気持ちはわからぬでもない。
そのような姿をしていれば、謂われもなく蔑まれたり馬鹿にされたこともあったであろうし、悔し涙を流したことも一度や二度ではあるまい。
だが、物は考えようだぞ。そういう辛い経験をすると、普通に生きてきた者よりも人の心を深く読むことができるようになり、人の心の痛みもよくわかるようになるはずだ。
わし自身、子供の頃から実の父親に命を狙われるような経験をしてきた。
それ故、勘助の気持ちが少しはわかるのだ。


どの家も四郎左の醜さを嫌って軍配者として召し抱えようとしなかったことを、晴信は武田家にとって幸運だと言い高禄で召し抱えます。


前作で何度も死にかけ、執拗に虐げられ続けてきた四郎左がついにチャンスを掴みとったこのシーンが本当に熱い。


ここから四郎左が戦におけるその才能を存分に発揮し、無敵の武田軍が生まれ
風林火山は破竹の快進撃が始まります。


前作ではあまり描かれなかった戦のシーンも沢山描かれ、諸国の政治情勢などもとても丁寧に描かれているため僕みたいな歴史音痴も話の流れを見失う事がありませんでした。


支配したはずの国が実は恨みがずっと燻っていて武田と敵対する国の謀略によって反旗を翻し再び敵になったりその辺の駆け引きの難しさや様々な対処の仕方がとても面白かった。


まるで一緒になって軍議に参加して色んな可能性を検討してるみたいでした。


面白い、面白いよコレ!


加えて戦の事だけではなくどんなに苦しい事があっても生きろと訴えるこの本のメッセージは命の大切さを教えてくれるんじゃなかろうか。


捕虜となり、懐は広いが恋愛下手の晴信に夜這いされ、屈辱に耐え切れず自殺しようとした雪姫という美しい諏訪の姫をそれでも叱る四郎左の言葉がとても印象に残った。


たとえ捕虜となっても晴信に言いなりになるのではなく、屈辱に耐えられず自殺するのでもなく、


いくらでも逆らえばいい。
殴っても蹴っても噛んでもいい。
なぜなら、それは生きているということだからだ。
死んでしまえば何もできない。
生きているからこそ逆らうこともできる。
どうしても姫さまが死にたいと言うのであれば、死んだつもりになって自分の身を諏訪の民のために捧げればよい。
わしなど、これまでに何度死のうと思ったかわからない。
自分にその気がなくても他人に憎まれ命を狙われたことも一度や二度ではない。
だが、生きてきた。何とか今まで生きてきた。だからわしはここにいる。
随分と辛い思いもしたが、今になってみれば、それでも生きていてよかったと思う。
虫けらのような男だが、そんな男でも必死に生きていれば何かの役に立つ。
雪姫さまとて、そうだ。
わしなどより、ずっと人の役に立てる御方なのだから簡単に死んでもらっては困る。


ただ生きているだけでも十分に意味があり、死ねば全てが終わってしまうという言葉を何度も殺されそうになりながら諦めずに這いつくばって生きてきた四郎左が言う事でとても説得力があった。


それだけではなく無敵となった武田軍に、人の心におごりが生まれ、その結果大きなものを失う教訓までも描かれていてその気付き方の描写がとても上手かった。


むすびの章では今回命からがら逃げのびた冬之助が足利学校時代の先輩景岳をたより越後の影虎(後の上杉 謙信)と出会い召し抱えられるシーンで終わります。


これでようやく北条、武田、長尾の三氏。小太郎、四郎左、冬之助の三人が関東の覇権を巡って三つ巴の死闘を繰り広げる条件が整います。


本当に引っ張るよこれ。


謙信の軍配者(仮)は夏頃予定だそうです。


うーん、とても丁寧に描かれた歴史小説です。


話が面白いと歴史はこうも面白いのかって感動しました。


次作でいよいよ稀代の軍師となった三人が関東の覇権を巡ってぶつかり合うのかと思うととても楽しみです。


次回も絶対読もうと思います。
 

photo
信玄の軍配者
中央公論新社 2010-12
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評価

早雲の軍配者 忍び外伝 虎の城〈下〉智将咆哮編 (祥伝社文庫) 虎の城〈上〉乱世疾風編 (祥伝社文庫) 迷子石

by G-Tools , 2011/01/13



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