風の歌を聴け の書評・感想

誰もが知っていることを小説に書いて、いったい何の意味がある?

風の歌を聴け

kazenouta.jpg 1970年の夏、海辺の街に帰省した〈僕〉は、友人の〈鼠〉とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。2人それぞれの愛の屈託をさりげなく受けとめてやるうちに、〈僕〉の夏はものうく、ほろ苦く過ぎさっていく。青春の一片を乾いた軽快なタッチで捉えた出色のデビュー作。群像新人賞受賞。

【村上 春樹の面白さって何?】って話題がどこに行っても必ずあって、
それに対する明確な答えはどこに行ってもないような気がします。

僕が春樹さんの小説の好きな所はなにかしら深そうで教訓じみたセリフとか無国籍で匿名的な主人公や場所の描写、それにアメリカンチックでおしゃれな文体が好きなんです。

会話や流れる音楽、文体のおしゃれさがとてもクールでかっこいい。

だってマイルス・デイビスのレコードを買いに行ったりカントを引用したりグラスにワインを注いだりするんですよ。

コップにファンタをなみなみと注いでスケジュール帳にメモったジョジョの奇妙な冒険の名言集を引用して悦に入る(「だが断る」等)僕とはセンスが違うんです。

それ以外の事はあえてあまり深く考えないようにして読んでいて、それで十分満足なんですが著者の小説が世界的に有名で、毎年ノーベル文学賞候補で報道される事から【この本のいったいどこがそんなに面白いんだ?】って明確な答えをなんとか出そうとして作品の素晴らしさを伝えるとても難解な解説や、反対にその一切を拒絶するような辛辣な批判をよく目にします。

けれどそれに対する明確な答えはないと思うんです。

あるいはただ僕には理解出来ないだけなのかもしれません。

人間の心の深い感情をえぐりだし、それを正確に描写する小説
伏線を作中にちりばめ、最後にそれを鮮やかに回収する小説
青春の甘酸っぱさや未完成さを思い出させてくれる小説
女心の微妙な機微をリアルに描き出した小説

色んな小説があるけれど僕にとっての春樹さんって例えば空気のような存在でその良さって「空気の良さ」といった目に見えないとても感覚的なものに近いです。

「ここの空気って澄んでるよね」とか「空気がおいしいね」とか。

元々東京に住んでいる人は「空気が悪い」なんて言われてもどこが悪いのかきっとあまりピンとこないし反対に緑に囲まれた自然の多い土地に住む人はその空気のおいしさや緑の美しさを当たり前のものとして受け入れているんじゃなかろうか。

だから色んな小説を読んで辿りつく「村上 春樹」と1番最初に読んだのが「村上 春樹」では感じ方が全然違うと思う。

色んな小説を読んで村上 春樹を読むとおしゃれな文体や教訓じみたかっこいいセリフにきっとぐっとくる思うし反対に読書として1番最初に村上 春樹を読んでしまうと読書ってやっぱつまんねーな。よくわかんねーし。ってなるんじゃないだろうか。

その良さが空気や雰囲気的で目に見えず、目に見えないものを言葉にするのはとても難しいのだから。

そんなわけでこの【風の歌を聴け】も明確に伝えようとしているものとかそーゆーのはあんまなかったと思いました。

<1970年の夏、海辺の街に帰省した〈僕〉は、友人の〈鼠〉とビールを飲み、介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。>

ほとんどこの1行でこの本の内容を説明し終わっている気がする。

主人公の僕と友人・鼠の関係もひどくドライで無機質なもので友情の大切さをこの本から学ぶことなんてきっと不可能だろう。

【介抱した女の子と親しくなって、退屈な時を送る。】と書いてある通り女の子と良い雰囲気になるけどそれは甘いラブストーリーでもないし激しい愛憎を描き出すものでもない。

退屈な時間だけが流れていく。

それだけだときっと本当につまらない小説なんだろうけど、とにかく意味深で教訓じみたセリフや匿名的でクールな登場人物、ドライで無機質な感情が透明で透きとおった世界、現実観のない不思議な空気を作りだしていてそれがとても春樹的な世界だと思いました。

YouTubeで見つけたこの動画が村上 春樹さんの良さをとてもよく表現されているなーと思ったよ。

あまり真剣に議論するんじゃなくこーゆーくだけた感じで語り合うのが面白いと思う。

僕がここに書きしめすことができるのは、ただのリストだ。
小説でも文学でもなければ、芸術でもない。
まん中に線が1本だけ引かれた一冊のノートだ。
教訓なら少しはあるかもしれない。





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風の歌を聴け (1979年)
講談社 1979-07
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評価

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by G-Tools , 2011/01/19



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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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