ショートカット の書評・感想

今日は彼の誕生日だった。
彼が住んでいる遠くのあの街で、彼は自分の誕生日を忘れて忙しく仕事しているかもしれないし誰かとお祝いしてるかもしれないし、それをわたしは知ることができない。
知ることはできないけど、彼はどこかにいてそこで生活をしているからいいと思った。
それは、わたしにとってはとても辛いことだけど、彼がちゃんとどこかにいるっていうことは、いいことだから。
つぶつぶみたいなのでできたこの世界の、わたしもいるこの世界の、どこかに

ショートカット

人を思う気持ちはいつだって距離を越える。離れた場所や時間でも、会いたいと思えば会える。「だって、わたしはどこにでも行けるから」―遠い隔たりを"ショートカット"する恋人たちのささやかな日常の奇跡を描いた、せつなく心に響く連作小説集。

【きょうのできごと】を読んでから柴崎さんの文章がとても好きで付箋を付けて何回も読み返しているんですが、あまりにも好きすぎて他の作品がなかなか読めないでいて、ようやく2作目を読んでみました。


いやぁ えぇですわ柴崎さん。めっちゃ、えぇですわ柴崎さん。。


ストーリーの面白さとか登場人物とか内容とかよりこの人の考えていることや表現しようとしていることが自分は好きなんだと思いました。


全然関係ないんですがMr.Childrenの「NOT FOUND」という名曲の中に


何処までいけば解りあえるのだろう?
歌や詩になれない この感情と苦悩


っていう歌詞があってそれが好きすぎて昔エンドレスリピートしたんですがそういう言葉になれない感情ってありますよね。


【きょうのできごと】から引用すると京都南インターチェンジから大阪に向けて高速を走らせている
午前三時の情景


ちょうど高架道路から降りるところで、その下降していく感じはとても心地よかった。
降りて信号待ちをしていると、すぐ横にあるコンビニエンスストエアの前で、自転車に三人乗りして来たらしい高校生ぐらいの男の子が、ほかの二人の乗った自転車に置いていかれそうになって、飲みかけのペットボトルを持ったまま慌てて追いかけていくのが見えた。
青いネオンサインに照らされている光景を見ながら、次の映画はこれでいくというさっきの中沢の言葉が、今度はほんとうでもいいなと思った。
目を閉じると、オレンジ色の光がいくつも見え、それを数えている間に今日何度目かの眠りについた。

~今日のできごと~


って部分が好きなんですが、この[何気ない光景の何気ないけどなんかいいなって思う感じ描写力]の正確さがすごい良い。


【ショートカット】の書評を書かれているブロガーさんを検索して参考にさせてもらっていたんですがその中で本のある生活のjuneさんの感想




がまさにその通りだなって思いました。


「ショートカット」「やさしさ」「パーティー」「ポラロイド」遠距離恋愛をテーマにした4つ短編が収録されていて「ショートカット」は東京に好きな人がいる大阪の女の子が飲み会で俺はワープをしたことがあるんだって言う酔っ払いにつかまって延々とその話を聞かされる話です。


好きな人がいる東京から距離にしてだいたい400キロメートル離れているのだけどそれがどれくらい遠いのか近いのかもよく分からない。星までの距離が遠いとか近いとか言われても実感できないみたいに。


けどそれは本当は新幹線で三時間しかかからない距離で遠いっていったって行こうと思えばいつだってとても簡単に行くことが出来る距離で。
そういう漠然と遠いなって気がする距離感と向き合って、自分達はその気になればどこにだって行くことが出来るんだって言ってくれているみたいでした。


「やさしさ」も彼氏が東京に行ってしまった女の子の話で今度は反対に同じ場所にいるだけでなにも言わなくてもわかることが電話の向こうとこっち側でいくらしゃべっても伝わらないようなもどかしさが書かれています。


別々の景色を見ていることの違和感とか距離によって世界が隔てられその人への思いや相手の優しさが宙に浮いてるみたいになってしまうのが切なかったです。


誰かへの優しさとか思いやりが上手く相手に届かずに宙に浮いてしまうのは本当に切ない。
例えば風邪をひいてしまって彼氏が夜心配して電話をかけてきてくれるんだけどその時ちょっと気になる男の子と一緒にいて電話に出れないとか。彼氏とは遠距離だからね。


彼氏の優しさとかがどうしようもなく届かない感じになってしまって宙に浮いててすごい切ないんだけどその様を(なんて綺麗なんだろう)って思う僕は頭がおかしいのかもしれません。


「パーティー」は写真のモデルになってほしいと頼まれた女の子が海辺でモデルをしてそこからフェリーに乗って播磨灘まで行って新幹線に乗って大阪まで帰ってきて最終バスに乗ってクラブのパーティに行く話です。あらすじだけだと本当になんもないんだけどこれが1番好きでした。


1ヶ月前に別れた恋人のことがまだうまく忘れられない女の子の視点で、他の短編と同じように淡々と展開していくんだけど別れたことで決定的に世界が隔てられてしまい、もう距離が近いとか遠いとか関係なく会えないことを


心の底でいつもうっすらと考え続けている一ヶ月前に別れた恋人のことが、またあっというまにはっきりと頭の中を占めてしまう。
新幹線に乗っても飛行機に乗っても、もう会いに行けない彼のことが。


と表現していてこれが1番遠い気がした。


そうか。もう遠いとか距離の問題じゃなくて、根本的に終わってしまって会いに行けないんだなって。


最後の「ポライロイド」の中で主人公の友達の女の子の弟で涼一くんっていう25才の男の子がいて彼女に出ていかれてしまったその男の子がなんの話をしてもすぐ彼女の話になるんだけど


まあなんて言うかさ、しばらく時間をおいたら、じゃあ向こうもおれの良さを再確認してくれると思うねん。その間に、おれももっとかっこよくなるし


って言うんだけどこれには うわ!俺も思ったことあるよこんなことww って古傷が疼きました。


すごい痛い。(笑)

イタすぎるよあの発想。


もしもタイムマシーンがあったらあの時の自分にまわりから見たらどんだけイタい人になっていることかを伝えてあげたいです。


なんてゆーか残念だけど女の子は再確認とかしないんだよねあれって・・。


全体を通して胸が張り裂けそうな失恋の痛みとか強いな喪失感なんかはなんにもないんだけど本当にありのままの世界の美しさが書かれているのでちょっとした風景や何気ないできごとに注意しながら読むときっと面白いと思います。


個人的には表参道の空気の色とかどっから入るのかよく分からない新宿御苑の入口とかがすごいツボでした。


表参道は本当にきれいで良い所だし新宿御苑の入り口が分からなくて入れないんですよね(笑)


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ショートカット (河出文庫)
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評価

フルタイムライフ その街の今は (新潮文庫) 次の町まで、きみはどんな歌をうたうの? (河出文庫) 青空感傷ツアー (河出文庫) きょうのできごと (河出文庫)

by G-Tools , 2011/03/01



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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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