絶叫委員会 の書評・感想

「どうして縄文杉に会いに来たのですか?」
「会いに来たんじゃありません。観に来たんです」
「それは人生を変えようと思ったからですか?」
「いいえ」

絶叫委員会

町には、偶然生まれては消えてゆく無数の詩が溢れている。
不合理でナンセンスで真剣で可笑しい、天使的な言葉たちについての考察。

夜の電車のなかで、成分の全てがグチとワルグチとジマンとホシンであるような
酔っぱらいの独り言をきいていると、だんだん悲しくなってくる。

世界がとても薄っぺらい場所に思えてくるのだ。

どうせならその逆がいい。

世界はなんだか得体の知れない奥行きをもった場所であって欲しい。

僕は恩田 陸さんの「不連続の世界」や恒川 光太郎さんの「夜市」などが好きなのですが、
その理由はそれらが得体の知れない奥行きをもった話だからなんだなと思いました。

2つともちょっと現実離れした世にも奇妙な物語みたいな内容なんだけど、
得体の知れないその世界観にとても興奮したのを憶えています。

この本はそうした常識的な日常生活の中で時折垣間見せる得体の知れない世界、他者の心を貫く言葉達にスポットを当て、その美しさをあらためて気付かせてくれるんです。

「人間にはおじいさんとおばあさんと男の子と女の子の四種類があって、
最初から「それ」に生まれてくるんだと思ってた」

「子供の頃?」と私は訊いた。

「うん、幼稚園の頃。でね」と友達は云った。

「ああ、あたしはおじいさんに生まれなくてよかったって」

という幼い頃にものすごい間違った認識をフツーにしてたって話があるんだけど、そのことを

人間や時間や世界について、それくらい違った認識のなかをずっと生き続けるひとがいたらロマンティックというか凄いと思う。

単なる間違いの領域を本当に突き抜けることができれば、新しい世界の現実を掴めるかもしれないのに、などと期待してしまうのだ。

という風にまとめられていて、そんな世界を創造すると本当にわくわくしました。

無限の可能性や尽きることのない想像力を感じることが出来るし、
何か本当にその人の個性のようなものを感じられる。

幼い頃はそうした「自分だけの世界観」がまだ多く残っていて、世界は得体が知れずいろんなことにワクワクしていた。
それがいつからか流行や常識をテレビやヒットソング、ファッション雑誌に植えつけられ、平均的をこよなく愛し、自分だけの世界は非常識という言葉で排他され消えてしまったように感じます

例えば言葉の世界において、ど真ん中のストレートを投げるのは意外にも難しいという例で
【「好きだ愛してる君を一生離さない」という言葉は直球ではなく単なる棒球に過ぎない。】
という話がある。


「愛じゃなくても恋じゃなくても君を離しはしない」

「リンダリンダ」(甲本ヒロト作詞)のワンフレーズだが、このような例からもわかるように、
棒球の平凡さというか見慣れた感じに対して、ど真ん中の直球には目も覚めるような意外性が必ず含まれている。

言葉が単なる棒球ではなく他者の心を貫くストレートになるためには、自己と世界の間に横たわる絶対的な亀裂を飛び越す必要がある。

そのために言葉は「翼」をもたなければならない。この「翼」こそが意外性の本質だと思われる。

2chで【J-POPの歌詞における「何か」の探され率は異常】というスレが話題になったけどその中で

会いたいく会いたくて震えるのが西野カナ

会えないから会いたいのが沢田知可子

会いたいくて会えないから私だけを見てほしいのが加藤ミリヤ

会いたくて会えなくて長すぎる夜に光を探してるのがGLAY

会いたいから会えない夜にはあなたを思うほど Uh UhするのもGLAY

会いたくて会えなくて揺れまどうけれど目覚めた翼は消せないのがラルク

会いたくて会えなくて唇噛み締めるのがEXILE

会いたくて会いたくて涙が止まらない夜なのが岡本真夜

会いたくて会いたくて素直な自分でいつもいられないのがLINDBERG

会いたくて会いたくて眠れぬ夜にあなたのぬくもりを思い出すのが松田聖子

会いたくて会いたくて言葉にできないのが小田和正


別に会う必要なんてないのが宇多田ヒカル

というのがあって宇多田ヒカルが明らかにかっこよすぎると思ったのは多分この意外性という翼を持っているからなんだろう。

もうひとつ、鮮やかで意表をつく直球の例で、狩撫麻礼原作の漫画を例に、こう書かれてある。

年齢と共に女性の容姿は必ず衰える、永遠に美しいままの女性はいない、
という意味のことを事実として周囲に言われたとき、主人公の男はこう叫んでいた。

「八千草薫の例がある!」


私は胸をうたれた。

なんて恰好いい反論なんだろう。

この場合の「翼」は唐突な具体例「八千草薫」だ。

「八千草薫」には主人公の恥ずかしいほどの本気さが宿っている。
「八千草薫」の例があるのだから、ほかにも永遠の女神は存在するはずだ、
という純粋で自分勝手な世界への夢を感じる。

これは確かにかっこいい。

歳をとると容姿は衰えるよっていう常識的な意見をいう奴より100倍くらいかっこいい。

なんていうか多分常識にとらわれずに、自分の生き方を貫いている人だけが持つ輝きのようなものがあるのだ。


個人的に言霊をわりと信じていて、言葉には力が宿ると思っている。

ポジティブな言葉にはポジティブな力が宿るし
ネガディブな言葉にはネガティブな力が必ず宿る。

お笑い番組やコントを見ているとなんだか元気が出るのはどんな災難も笑い飛ばしてしまうような前向きな力が言葉に宿っているからなんじゃないかって思います。

美しく力強い言葉、名言に触れたい時、常識的な考えから抜け出したい時にこの本を読むときっと何かをつかめると思います。


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絶叫委員会
筑摩書房 2010-05
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評価

整形前夜 現実入門―ほんとにみんなこんなことを? (光文社文庫) 本当はちがうんだ日記 (集英社文庫) もうおうちへかえりましょう (小学館文庫) 世界音痴〔文庫〕 (小学館文庫)

by G-Tools , 2011/05/29



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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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