あんじゅう の書評・感想

なあ、くろすけよ。
おまえは再び孤独になる。
だが、もう独りぼっちではない。
私と初音は、おまえがここにいることを知っているのだから。

あんじゅう

とある事件によって心を閉ざしていたおちか。
行儀見習いとして身を寄せた叔父の店で、
ひょんなことから百物語の聞き集めをすることに。
「黒白の間」でそっと明かされる秘密が、彼女を少しずつ変えていく。
さあ、今日もまた一人、
胸に「不思議」を抱えたお客様が三島屋にやってくる・・・

これは『おそろし』の続編なんですね。
知らずに続編から読んでしまいました。


なんか続編から読んでしまうパターンの失敗を定期的に繰り返してしまうんですが
前作で体験した出来事を振り返ったりする場面で、同じように記憶を振り返ることができず
多少分からない部分はあったけど【主人公おちかの元に不思議な出来事を抱えた人々が話をしにくる】という展開の仕方で、1つ1つのストーリーが短編集のようになっているのでそんなに違和感なく読めました。


主人公おちかは良助という幼なじみの許婚を兄弟同様に親しんできた男に殺されてしまった。
その男松太郎も良助を手にかけた後己の命を絶ってしまいおちかは心底打ちのめされ我が身を責めさいなんでいた。その後
おちかは事の起こった場所を離れ江戸の叔父の袋物屋・三島屋に行儀見習いの名目で託される。


ある日たまたま叔父の伊兵衛が招いた客をおちかがもてなさなければならなくなり、その客がおちかに古い打ち明け話をし客が帰った後おちかの沈みようがそれまでとは少し違っていて己を責める堂々巡りをやめて一心に考え込んでいたことから伊兵衛はおちかには慰めや励ましよりも世間というものに耳を傾けることこそが必要なんじゃないかと懇意の口入屋に頼み三島屋が江戸中から不思議な話を集めていますと触れ回ってもらうことにした。


こうして一度に一人ずつ、一話語りの百物語の聞き集めが始まるんですが

第一話 逃げ水
第二話 藪から千本
第三話 暗獣
第四話 吼える仏

の4つの物語が収録されています。


宮部みゆきさんて本当に引き出しが多いですよね。
ミステリーを書いても面白いし時代劇を書いても面白いし。
『あんじゅう』は『日本昔ばなし』のようなものをイメージするとそれに近い内容だと僕は思います。


なんかね、イラストはとても可愛らしいし不思議な物語に童心をくすぐられたりわくわくしたり子供の頃日本昔ばなしをいつも楽しみにしていたんですがあれって一定の割合で愉快な話の中にやりきれない話や考えさせられる話が混ざっていた気がするんです。


時にそれは人間のおごりだったり、悪意だったり、悔恨だったり後悔だったり。


おぼろげだけど今にして思うと人間の心理描写を上手く描いたアニメだった気がします。


『あんじゅう』もそういう心理を人間だけじゃなく、神様や幽霊の立場からも描かれていてそれがとても胸を打ちました。


1話の『逃げ水』ではお旱さんと呼ばれる小さな女の子の姿をした神様と平太という男の子の話なんですがその昔鉄砲水に苦しむ村で修験者を呼び山のヌシである白子様(お旱さん)に鉄砲水が出ないよう溜まった水を飲んでもらうようお願いをしたのが始まりで村の人々は白子様を仰ぐようになり鉄砲水も止まるのだけど時が流れ代が変わり環境が変わっていくと人々の信心は薄れ次第に都合の良い理屈が付き白子様にはもう山に帰っていただこうということになる。


これに機嫌を悪くした白子様は村の鉄砲水だけじゃなく村の水を飲み干し村では水が涸れ旱のようになる。(故にお旱さん)


人は勝手な生き物だ。願いをきいて便宜をはかってくれるあいだは有り難がり、
言うことをきいてくれなくなれば途端に忌み嫌う


三十年前、白子様に願いを聞き届けてもらうために呼んだ修験者を今度は白子様を封じるために呼び寄せ社を壊し山の祠に封じ込め、以来お旱さんは長い年月をそこで過ごすことになった。


そうして人々がお旱さんのことをすっかり忘れた現在、ある事件からその封印を平太が解き放ち、平太とお旱さんの交流が始まるんですが神様とか幽霊とか人間とか。
感情を持っているのは人間だけじゃなくて、神様にも幽霊にも自分の身に起きることになにか思うところがあるし、人と同じように寂しいとか嬉しいとか感じたりするのかもしれない。


村人に忘れ去られベソをかく女の子(お旱さん)、約束を果たそうとする男の子(平太)
時代や存在を超え、そういった心の交流を描いているから宮部さんの小説は本質的で
胸を打つんだと思う。


表題作「暗獣」では思わず胸が詰まり涙が滲みました。


前作『おそろし』と『あんじゅう』でかなりのボリュームがあるのですが
百物語まであと92話だそうで、まだまだ先が楽しめそうな物語です。


やがておちかの抱える痛みや閉ざした心が再び開かれるその日がくるのを
楽しみに待とうと思います。


著者インタビュー:三島屋変調百物語事続 あんじゅう -宮部みゆき-|中央公論新社



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評価

ばんば憑き おそろし 三島屋変調百物語事始 小暮写眞館 (100周年書き下ろし) おそろし (新人物ノベルス) あやし (角川文庫)

by G-Tools , 2011/08/23



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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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