水曜日の神さま の書評・感想

日々暮らしていくことはときどき旅にたとえられるけれど、それはたとえではなくて、事実だと私は思っている。見慣れた場所で昨日のくり返しのような日を送るのも、果てしない旅の一瞬である。そうしてもちろん、私たちのこの膨大に積み重なっていく旅は、数になんておさまってはくれないのである。

水曜日の神さま

suiyoubinokamisama.jpg 「旅をすれば小説が書ける」と信じて10年。ところがある日、小説が書けなくなった。
さあ、どうする?! 書くこと、旅すること。


海外旅行に興味津々でして、海外に行ったこともないくせに紀行文や海外の写真をちょこちょこ見るのが好きなんです。「深夜特急」を読んで旅に出たくなったりFlickrで色んな国の写真を見て関心を抱いたりとかその程度だけど。

以前は本当に海外に興味なかったんですが角田さんのエッセイを読んでから価値感がずいぶん変わりました。それまでは海外旅行の目的というか、何をしに行くのか考えた時

「世界遺産を1度見てみたい!」
「ハワイでのんびりしてみたいなー」
「ヨーロッパとかなんかかっこいいしさ」

「まぁでもテレビとかで見たことあるしな・・」
「それに行ってサービスが悪くて嫌な思いとかするの嫌かも」

くらいに考えていたんだよね。

上手く言えないんだけ楽しく過ごすためだけに遠くに行くのもアレだよなぁ・・みたいな。

そんな風に考えていました。でも違ったんだ。

当然のことながらこれらの感情は「観光」がベースにあって、そこには様々なサービス、快適な旅をお約束してくれる方々が用意してくれたプランなり宿なりがあるわけで綺麗に敷かれたレールの上を走っているから感じらることなんだと思います。

考えてみると観光で潤っている国やリゾート地、そういう所っていうのはビジネスとして観光客にお金を落とさせることが重要なのだからお金さえ使えば基本的に楽しく過ごせることだろう。でもそういう場所で楽しく過ごしただけでその国の文化、世界の広さを知ることなんて出来るのかな?

観光客には見せない裏の顔、自分達が信じているもの、文化、生活、日常。

何かそういうものがもっと沢山あって旅行の醍醐味ってもしかしたらそこにあるんじゃないか?
テレビや聞いた話で知ったつもりでいる世界は表面のほんの一部分でしかないんじゃないか?

って思いだしてからというもの俄然海外に興味を抱くようになりました。

そう思わせてくれたのが角田さんが色んな国を旅して感じたことを書かれているこの1冊です。

いくらその習慣の違いに傷つくことがあろうとも、泣いたり地団太を踏んだり、戸惑うことがあろうとも、だからこそ旅に出る意味があると私は思うのだ。

自分のスタンダードがことごとく通用しない場所に身を投じ、なんだかぜんぜんわかんないと思う、そのときこそ、けっして把握なんかできっこない世界というものの手触りを、多少なりとも実感できるのではないかと、思うのである。

エッセイの中で角田さんは私が旅を愛するのは、自分というものがけっして普遍的な存在ではない、と知ることができるからでもある。
私が「ふつう」と思っていることが、世界的スタンダードであるならば、旅に出たいとそもそも私は思わないだろう。って書かれています。

自分がテレビやニュース、教科書で知ったその国の(○○はこんなとこだろう)って想像はうわべの知識でしかなくて、その国を深くしると???ってなることが沢山あるそうだ。

例えば自転車タクシーに乗れといって半日ついてくる運転手の労力とお金のバランス感覚。
100円のものを売るのに500円と告げる不誠実さ。
列車の時刻表がなんの役にも立たない国もある。

そういうことって日本ではあり得ないですよね。

「商売というのは誠実さ、正直さを欠くと成立しない」と僕達は思い込んでいるし電車が10分遅れることにひどく腹を立てるし半日もついてまわるなんて暇を持て余したナンパ男でもしないだろう。

自分が信じてきたもの、とらわれてきた常識がまったく通用しない場所に立った時
人ははじめて世界の広さを実感するんじゃないだろうか。常識って一体なんなんだ?

それはきっとカルチャーショックという言葉では足りない、自分がこんなもんだろうとすっかり慣れていた世界観が大きくぐらつくような衝撃なのでしょう。

逆に海外から日本に来て1番苦労するのは「沈黙」であるように思うって指摘はすごく的を得ていると思いました。「空気を読めよ」とか「マジKY」とか言ったりするアレです。

「KY」という言葉そのものはとても新しい言葉なので拒絶反応を示すこともあるんだけどその文化は昔からずっと受け継がれてきたものでもはや日本人が持つ特殊能力と言えるんじゃないかな。

列に横入りしてきた人に対して並んでいた人達は無言のまま係員さんに対応するよう視線で訴え、係員さんもそれを察して注意することが出来る。

沈黙の習慣を持たない国から見ればこれってほとんど超能力の世界だと思う。

言葉を発さず、相手の言いたいことを気配で察するというのは、相手を慮るという点において、実際はとても成熟した、美しい所作であると思う(それが成熟した、美しい文化を作っているかどうかはさておき)。しかし沈黙の習慣を持たない人々は、これに慣れるのは大変だろうなと私は推測する。

この人の書く言葉は本当に的確だ。

感じたことを言葉にして外に出す時、最も適切な言葉を選んでいてその正確さが僕は大好きです。

もしもいつか海外を旅することがあったらこの本を持って行こうと思っています。
観光という行為の土台になっている「サービス」を引っぺがし、その下に広がっている文化、生活、日常、信仰を知るための旅。
サービスのないそこには見たくないものもあるだろうし、嫌な思いもいっぱいするかもしれないし損をするかもしれない。

でもその国の人がどんなことを考えて、どんな生き方をしているのか、そういうことを知ることが出来れば人生はもっと面白くなる。なんとなくそんな風に思うのでした。

もっと損しろよ、と、ぼくは思うんです。
買った本や映画がつまらなかったとか、
行ってみた遊び場でおもしろくなかったとか、
手に入れた家電があんまりよくなかったとか、
失敗したり損したり、じぶんの裁量でやろうよ、もっと。
まぁ、選んだ恋人がろくでもなかった
‥‥なんていう厳寒のケースも含めてさ、
傷や痛みをある割合で引き受けたやつのほうが、
損はしているかもしれないけど、心がでかいと思うんだ。

ほぼ日刊イトイ新聞


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水曜日の神さま
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評価

よなかの散歩 (ORANGE PAGE BOOKS) 何も持たず存在するということ 彼女のこんだて帖 (講談社文庫) 私たちには物語がある ひそやかな花園

by G-Tools , 2012/03/09

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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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