幾千の夜、昨日の月 の書評・感想

彼らの信じている神さまを信じろと言われても、私は信じないだろうし
この先熱心に祈れる対象を自分が見つけるとは思えない。
でも思うのだ。祈りというものが、意味のない行為であるはずかないと。

幾千の夜、昨日の月

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不安と期待をもって降りたった異国の旅先で、母を見舞い、消灯時間が過ぎたあとの病室で、夜を徹して友と語り合った夏の林間学校で......夜はときとして、私たちがひとりであることを思い出させる――傑作エッセイ!


二ヶ月ぶりのBOOKレビューです。

最後に読んだのは角田 光代さんのエッセイだったのですが今回も角田 光代さんのエッセイで「幾千の夜、昨日の月」を読みました。

角田さんが過ごした夜と旅行で訪れた国について書かれたエッセイ・紀行文なんですが1つ1つのお話の中に知らない表現方法、言葉の使い方が沢山あった。

【白い光の頼りない街灯が、よけい夜の暗さを強調している】

これはマラケシュから乗ったワルザザード行きのバスの到着が夜になってしまって知らない国の知らない町で夜な夜な宿を探すことになった時の状況を表した一文なんですが夜にまつわる話の中で夜の空気、夜の匂いを
ちゃんと感じることができる文章だし、そうゆう感覚を文章に出来るってとてもすごいことだと思う。

僕は街灯は夜の闇を照らしてくれるものだと思い込んでいるんだけど、それがかえって夜の暗さを強調しているって表現はすごく想像できる。こんな文章の書き方、表現の仕方があるのか。

たぶんそういう表現の仕方は「水曜日の神さま」で直木賞を受賞した時のことを書かれていた【かつて異国を旅する毎に見たこともない光景に出会い、自分の世界が広がり、その度に新しい表現の仕方をつかまえることができた】ってことに起因するんだろう。

旅をすることは小説を書くことを助けてくれていてある意味小説を書くために旅をしていた時期があるというようなことが書いてあった。

旅することと小説を書くことは少しずつ切り離されていったそうだけどそういう文章を書くことに対する真摯さとか真剣さがあって、適切な表現や語彙を身につけられてきたんだろうなぁ。

文章、言葉を使うことにどれくらい真剣に向き合っているのか。

インタビューや自分語りのではなく本の中の一文からそれが伝わってくるから僕は角田さんが好きなのかもしれません。

言葉はどうしたって変わっていくものだけれど、出来る限り美しく正しい日本語を大事にしていきたい。この人の文章はそんな風に思わせてくれる。「ぶっちゃけさ〜」とか「うぜ〜」とか。そうゆう「今」流行りの数年で消えていくであろう言葉をあまり安易に使わないようにしたいと思いました。

妻や子どもたち、両親や祖父母、愛する人が今も明日も笑っていますように。
今日ごはんをおいしく食べたように明日も食べられますように。
今日と同じく明日も何ごともなく終わりますように。

彼らが彼らの神さまに向かって祈っていることが
そのとき、不思議なくらいはっきりと感じ取れた。

「祈る男」

ナイル川クルーズの船に乗っている時、厨房の休憩所のような狭いスペースで談笑していた二人の従業員がとてもさりげなくイスラム教徒のお祈りをし始めたのを見かけて。

お祈りではだれもがちょっといいことを考えるはずだ。
こうでありますように、とか、こうなれますように、とか、
それは自分がなりたいもの、手に入れたいもの、つまるところ「幸福」というものの中身を、日々確認する所業ではないかと思うのだ。

良いことを願うのが祈りで、悪いことを願うのは呪いなら呪いは自分の中の悪意、
不幸を確認する所業ではないかと思う。

もしそうなら何かを祈ることはあっても、なるべく何かを呪うことはしないようにしようと思った。

誰かへの悪意、憎悪を毎日思い(呪い)続けていると心は悪意に支配され卑しい人間になってしまう気がする。

だから例えば嫌なことやムカつくことがあっても何かを呪ったり呪詛の言葉をつぶやくかわりに自分や愛する人が平穏な明日をすごせるように祈りたい。

良いことなんてなくてもいい。
なにごともない平穏な明日がおくれますようにとか出来るだけミニマムなものが良い気がする。

宗教的なものでなくてもそうゆう至極ささやかで小さな願い、祈りは心を整え感情をコントロールしてくれる気がするから。

あるいは感情をコントロールするためやささやかな幸福を確認するために祈る という考えがすでに邪だろうか。

彼らの信じている神さまを信じろと言われても、私は信じないだろうし、
この先熱心に祈れる対象を自分が見つけるとは思えない。
でも思うのだ。祈りというものが、意味のない行為であるはずかないと。

無神論者の自分の祈りなどは邪でくだらないものだろうがせめて心を整えたり大切な人の存在をちゃんと確認出来ればいいなと思いました。


テレビやネットを見ていると大勢の人が誰かをよってたかって叩いているシーンをよく見かけたりします。

その時の言葉使いや正義を振りかざして罪や過ちを犯した人を罵倒し、再起不能か自分達が飽きるまで皆で袋叩きにする行為をなんて恐ろしいんだろうって思う。

悪意や怒りは伝染して自分とはまったく関係のないことにも人は怒りや憎しみを持ってしまう。

そういったものを過度に取り込んでしまわないように、心を穏やかに整えるために、本を読んでいきたいなって思いました。



photo
幾千の夜、昨日の月
角川書店(角川グループパブリッシング) 2011-12-27
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評価

曾根崎心中 かなたの子 彼女のこんだて帖 (講談社文庫) 口紅のとき 今日もごちそうさまでした

by G-Tools , 2012/05/29

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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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