下町ロケット の書評・感想

会社は小さくても一流の技術があり、それを支える人間たちの情熱がある。
あの工場に漂う香気は、たとえば財前の父の会社には決してないものであった。

下町ロケット

取引先大企業「来月末までで取引終了にしてくれ」メインバンク「そもそも会社の存続が無理」ライバル大手企業「特許侵害で訴えたら、...どれだけ耐えられる?」帝国重工「子会社にしてしまえば技術も特許も自由に使える」―佃製作所、まさに崖っプチ。


宇宙科学開発機構で研究者をしていた主人公・佃 航平。
研究テーマの結晶ともいえる大型水素エンジンを搭載した実験衛星の打ち上げに失敗し責任をとらされる形で退職。その後父親の跡を継ぎ精密機械製造をやっている佃製作所の社長を務めることとなる。

研究者を辞めたとはいえ大学と研究所でエンジンの研究に情熱を注いできた佃が社長になってからは精度が求められるエンジンやその周辺デバイスを手掛けるようになり売上は父の代の三倍に。
それでも売上百億円に満たない中小企業ではあるが、今ではエンジンに関する技術とノウハウは大企業を凌駕すると評判になっていた。

そんなわけで第145回直木賞受賞「下町ロケット」読みました。

面白かった。最高に面白かった。
おそらくタイトルから想像するとおりの内容なんだけどその熱さは想像をはるかに上回る熱さでした。

これは働く意味、仕事に対する姿勢を考え直すようなきっかけになる本だと思う。

ブラック企業、社畜、といった言葉が生まれてサービス残業を強いる会社を揶揄したり、「会社のために○○してるんだ」ってことを言う人をバカにするような風潮が一般化しているけれど一生懸命に働くことを美徳としてきた日本特有の宗教観が日本の経済を支えてきたんだと思うんだよね堅苦しい話だけど。

社員の待遇を軽視する企業もたしかに存在する時代。
それでも会社一丸となり、掲げる目標に向かって皆で精進したらそれはものすごいエネルギーとなり何かを成し遂げうる可能性を秘めているんだと思う。
ひとりじゃできないような大きなこと。そんなことを実現するために会社という組織があって、人は仕事を通して社会と関わっている。

そんなのは当たり前のことで、社会人というのは皆自分の仕事に対してプライドや責任を持っているんだけどそれを教えてくれる物語は以外に少ない。

大口取引先から急な取引打ち切りを言い渡された佃製作所。さらに佃製作所製品の特許の穴をつき、類似品を作り出し逆に特許侵害で訴訟してきたナカシマ工業。
その一方で大型ロケットの打ち上げ計画で新型エンジンを開発したけど佃製作所に先を越されてしまった帝国重工が持ちかけてきた特許の売却話。

大口取引先の取引打ち切り、特許侵害による訴訟、会社を取り巻く状況は非常に厳しく、そこで降ってきた特許売却の甘い誘惑に佃 航平自身も困惑するし社員も困惑する。

佃 航平の研究者時代の夢「水素エンジン」のバルブシステムの研究開発、その特許を巡り社内でも意見の食い違い、対立が起き社員の心がバラバラになりつつある中で働く意味、仕事に対する姿勢を考えさせられました。

使い道がなく、持て余している水素エンジンのバルブシステムの特許を帝国重工に売却するかどうか?

自分達の作り出したもの、その技術に特別な思いがある技術部、
せっかく上げた利益がいつも研究費に消えていくことを快く思っていない営業、
大口取引先を失い会社の運転資金がどうしても欲しい経理部、
そして自分のエンジンでロケットを飛ばしたい。社長・佃 航平の夢。

それぞれの思いが交錯し、口論になる中で経理部の殿村さんの言った

これは会社の本質に関わる問題だということです。
ウチの売りは、自社開発した高い技術をベースにした商品です。
その会社が、せっかく開発した世界的水準の技術を売却してしまう。
それは、ウチのビジネスの根幹から外れているような気がするんです。

って言葉が深かった。これは考えさせられるよ。

目の前に喉から手が出るほど欲しい特許使用料がぶら下がっている中で、
自分たちがやってきたこと、その本質を見つめ、会社としてどうするのがベストなのか。

利益を上げなくてはいけないんだけど利益を上げるだけが全てではないんだなって僕は思いました。

その後の帝国重工との駆け引き、バラバラになっていた社員の心が1つになるシーンは熱かった。

エンジンメーカーのプライドをかけて特許ではなく部品を納入したい方針の佃と大企業の社運をかけたプロジェクトのキーデバイスを外部から納入するなど論外であくまで特許の使用料で手を打つためにあの手この手で佃製作所に難癖をつける帝国重工。

佃の部品を納入する方針に反抗的な姿勢だった社員達が帝国重工の納入業者評価テストで散々バカにされ、自分たちが仕事に注いできたものに気付く

こんなもんテキトーに流して不合格ならそれで構わない、くらいに考えてた。
だけど、実際はじまってみたら俺自身が否定されてるような気がしたんだよ。
お前らは所詮中小企業だ、いい加減だ、甘ちゃんだって。だけど、そうじゃないだろ?
あいつらはウチに技術で先を越されたんだよ。この分野での技術力ではウチのほうが上なんだ。舐められる筋合いじゃない。


それは「佃品質。佃プライド。」

自分達の仕事と作り出すものの品質に誇りを持っている大人達がすごいかっこよかった。

自分達は何をつくり何を売ってるんだろう?
ただモノを売ってるだけじゃなくて品質や安心感、こだわり。
そうゆうものを提供しているんだって誇りはなにか仕事の本質的な部分に触れられた気がしました。

現実はこんなにうまくいかないよとか、社長にこんな口きけないでしょとか、そんなことは分かってるんだよ。だってそんな話はもう聞き飽きるくらいに聞かされてきたもん。

そうじゃなくて、僕が見たいもの、次の世代に見せたいものは会社のために働く意味とか仕事に誇りを持つってことがどうゆうことなのかってことなんだと思う。
休日を削られるデスマーチや遅くまで残業をして得るものがお金だけじゃ寂しすぎる。

もしまだ読んでいなかったらこの本はぜひ読んで欲しいです。
そして「社会人っていうのはなぁ」的なことを誰かに話す時、自分が仕事に注いでいる情熱や持っている誇りを交えて熱く話して欲しい。

そうして一生懸命に仕事をすることを揶揄する風潮がなくなっていけばいいなって思いました。



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下町ロケット
小学館 2010-11-24
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評価

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by G-Tools , 2012/08/01

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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
お酒がほとんど飲めずたばこも吸えなくてギャンブルとか全然面白くない草食系で 笹とか食ってそーだよねって言われるのですがベースは熊ですのでお気を付け下さい。
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