ブラッド・スクーパ の書評・感想

相手と戦うのではない、己の死と戦う。
己の醜さを斬るのだ。

ブラッド・スクーパ

blood_scooper.jpg 立ち寄った村で用心棒を乞われるゼン。気乗りせず、一度は断る彼だったが......。若き侍はなにゆえに剣を抜くのか? シリーズ2作目。


師であるスズカ・カシュウの死後、山を降り旅を続ける侍・ゼンの物語。
「ヴォイド・シェイパ 」の続編です。

今回は前作ほど禅問答的な自問自答、他者とのやりとりはなく、
その分相手と斬りあい命がけのやりとりをするシーンが多く出てきました。

「スカイ・クロラ」シリーズを読まれた方はご存知だと思いますが
その表現の仕方はとても詩的で限りなく静寂です。
手に汗握る といった感情はなく、どこまでも美しく透き通っていて。

まるで日本刀の美しさそのもののような小説でした。

立ち寄った村で用心棒を乞われるゼン。
話を持ちかけてきたクズハラという侍。
クズハラたちが護衛をしている庄屋シシドとその娘ハヤ。
そしてシシド家に伝わる秘宝「竹の石」
それは煎じて飲めば、老いることなく永遠に生きられると伝わる世にも稀な代物。

山を降り、少しずつ人と関わる中でゼンは前作よりも人との関わり方が滑らかになっている。
特にハヤと話す中では新たに得ることや感銘を受ける描写が多く剣の強さだけではなく人間的な
強さ、賢さ、深みのようなものが増していくのが分かりました。

こんなふうに考えられるのは、山を下りたおかげだな、と今は思っている。
つまり、煩わしいものの悪いことばかりではない、ということだ。
他者との関わりで得られるものは、一人で想像するものをはるかに超えている。
それは剣を交えることでも然り、またただ話をするだけでも、あるときは剣以上のものを得たと
感じることができる。

剣を交える相手、会話を交わす相手、人と関わる中でそれまで気付かなかったことに気付き、
自分の考えを整理、昇華しながら己の道を歩んでいくゼン。

このスタンスがとても素晴らしい。

バサカという二刀流の侍と対峙し、その技の冴え、異質さに衝撃を受ける描写があるんですが
これはバサカが追求してきた剣がバサカだけの剣、又は歩んだ道の末に築き上げた強さだったから

凄まじい速さで繰り出される二刀、攻撃に特化していて防御を知らない剣。

別の本で

正しさは間違いを内包していたり、間違いの前提として正しさがあったりする。

という言葉があるんですが、誰かに依存せず、自分が正しいと信じる道を進むからこそ多様性が生まれ自分だけの道、自分だけの強さが生まれるのだと思う。どうゆう道を選んでも長所と短所は必ず存在する。

迷いや不安があるときは誰かに相談したり人の言葉に頼りたくなるけれど、自分が出したこと以上に正しい答えなどありえないし、間違っていたとしても、その先に正しいことが待っていたりするんじゃないだろうか。

幸せというものが、はたして、人の生きる道にあるのだろうか。それはたぶん、毎日西に現れる茜の空のようなものかもしれない。はるか先にいつもある。しかし、そこに行き着くことなどできないのだ。ただ、あると信じて、歩くしかない。

という言葉がとても印象に残りました。

何を信じるかは自分次第。
ゼンのようにできるだけ誰かに依存せず、自分が正しいと信じる道を歩いていけるといいなぁ。

2作通して読んでみて何より森さんの描かれる世界観がすごく素敵です。
従来の侍ものの時代小説とはかなり雰囲気が違うのではないでしょうか。

この作品では、過去の日本がファンタジーの世界に見立てられている。
現代のファンタジーはヨーロッパ的な風物を中心として構築されているが、そうした要素は出てこない、和のエッセンスのみが存在する世界だ。抽象によって本質的なものだけを浮かび上がらせようとする試みは、非常に興味深い。

ダ・ヴィンチ電子ナビ

「外国から見た日本」のイメージを基調にして書かれているそうなのですが、そのあたりの詳しいことがダヴィンチ電子ナビに書かれてありましたのでそちらも参考にしてみてください。


森博嗣 新作『ブラッド・スクーパ』 最初の構想は「とにかくメッタ斬り」 | ダ・ヴィンチ電子ナビ
blood_scooper_davinch3.jpg


とても面白かったです。
 


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ブラッド・スクーパ - The Blood Scooper
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評価

ヴォイド・シェイパ 常識にとらわれない100の講義 喜嶋先生の静かな世界 (100周年書き下ろし) 相田家のグッドバイ 実験的経験 Experimental experience

by G-Tools , 2012/09/14


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本を読んだり絵を描いたりホームページを作ったり文章を垂れ流すのが好きです。
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